J.I.G. ジギング インストラクターズ グループ

カテゴリ: テクニカルノート

最近のジギングにおいてリールの進歩はめざましい物がある。
今まではナイロンラインを使用が前程で作られているため、強度が有り伸びが少ないPEラインを使うと、ベールやハンドルが折れたりギアが破損したりした。
最近出たリールはスピニング、ベイトを問わず壊れにくくなってメンテも簡単になっている。
特にGTやジギングの大物の場合はドラグ設定が10k以上とリールにとって過酷な世界だ。
それをクリアしているメーカーの技術は素晴らしい物がある。 私はダイワのテスターと同時にヘッドアンドテイルと言うソルトルアーの専門店を経営しているが、お客さんから良く「初めて買うのにスピニングタックルかベイトかどちらが良いか。」と質問される。その場合、「スピニングの方が良いですよ。」と答える事が多い。その理由として

① キャストしやすい。
② 早巻きが簡単にできる。
③ 価格が安い
④ ハンドルが左右交換できる。

などが有る。    
①の「キャストしやすい」は、不意のナブラなどベイトでも投げられるのだが技術が必要で、スピニングは容易であるからだ。キャストが容易だと有利な場合が多々ある。例えば日本海や九州の船ではいわゆる「ドテラ流し」で、片舷ずつ交代でジギングをする場合が有る。風上側は落とすだけで良いが、反対側は思いっきりキャストして1回か2回底を取ったらまたキャスト、という風にベイトでは難しい場合が有る。
また、水深が浅いポイントでは横投げで広範囲を探る方が有利なのでスピニングが良い。

②の「早巻きが簡単」は、ベイトでもハンドル1巻き1m以上巻けるリールも有るが、スピニンングの方が圧倒的に楽であるということ。

③の「価格が安い」は、スピニングは1万円で十分使用に耐えるリールが有るが、ベイトでは3万以上が普通であるからだ。ただし最近シマノから2万円までのベイトリールが出ている。

④の「ハンドル交換」は、大体餌釣りから入った人は右巻きが多いがバスからの人は左巻きも多い。
つまりそれぞれ得手不得手がある。ベイトはジギング用ではソルティガで左巻きが有るが、スピニングは全て左右両方OKで選択肢が広いという意味。


ベイトリールにも少し触れておくと、ベイトの場合は底が取り易いのとフォーリングのアタリが取り易い。
マダイ狙いのようにスローな釣りに向いている。構造がシンプルなので壊れにくい。巻き取りにパワーが有る、などの利点が挙げられる。

私はまず最初にスピニングタックルを買って次にベイトを買われたらと、お勧めしています。
スピニングが左巻きの場合、ベイトが右だとリールを巻く手の疲労がずいぶん違うし、釣れないときに気分転換にもなる。


以上簡単にスピニングリール、ベイトリールの違いを述べてみました。


古谷秀之

ジギングにおけるジャーク方法は千差万別あり、各個人でも独自のアピール方法で魚にアピールしていると思います。
ハイスピードジャークもこう言ったアピール方法の1つであり、ジギングと言う釣りのスタイルではロングジャークメソッドと同じくジギング最古にして単純明快、でもすさまじい釣果を生む有効なジャーク方法です。一昔前、私はもこの速巻き以外では魚が釣れないと信じていたわけなのですが、色々なフィールドでたくさんのスタイルを見て勉強して、ようやく色々なしゃくり方が自分の物になってきたような気がします。
ハイスピードジャークのやり方は?至って簡単、持てる限りの力をこめてリールを巻き、ショートジャーク(ジャガジャガ巻き)で、より速くジグを巻き取る魚を食わせる方法です。
さてさてこのハイスピードジャークですが、本来青物はイワシなどのベイトフィッシュを群れで追いかけまわして追いこみ捕食するスタイルが定番です。この追いかけまわすスピードは我々人間の常識を超えるほどのスピードであり、青物はそのスピードを維持したままで捕食ができるすごい魚なのです。
そしてこの逃げ惑うベイトフィッシュを演出するのがこのハイスードジャークなのです。人間の持てる限りのスピードとリールのポテンシャルは現在時速30キロほどのリトリーブスピードを実現できます。
これでも青物のスピードではそれほど速くないスピードです。

餌を捕食しているナブラの中にこのスピードのジグを通せば当然食ってくるのですが、それ以外の場合には有効にならないのか、答えは否。餌を追いかけていない青物でも目の前をこのスピードの餌が通過すれば瞬間的に捕食しようというレベルまで活性があがり、猛ダッシュでジグを追いかけてきます。
ハイスピードジャークとは餌を食べる気のない中活性で待機中の青物の活性を追いかけさせる所まで引き上げることの出きる有効なメソッドなのです。
しかし、ハイスピードジャークには重大な欠点もあります。ショートジャークで速く巻きしゃくるとジグが小刻みに動き、捕食がしにくいため活性の上がった青物はハタキという行動にでます。ハタキとは体当たり等により餌を弱らせ捕食しやすいようにする行動で、ジグに対しこれをさせると当然口に掛からず、スレ掛かりとなり魚をバラす原因となります。活性を上げ集魚する効果のあるハイスピードジャークですが、これらスレ掛かりによるバラシで魚を散らせてしまう事となります。
これを防ぐにはただ1つ。ハイスピードジャークの後にリトリーブスピードの緩む減速区間を盛り込むことが最良の方法です。ジグの減速=瞬間的に弱ったベイトフィッシュが演出可能となり。ハタキ行動をせずに、口を使ってくれます。
速く巻くと魚を寄せるけどよくバレる。遅く巻くと集魚効果はないけど口にかかる。この2つを合わせることにより、より効果的に魚をバイトにつなげることができます。ハイスピードジャークからスピードを変化させバイトにつなげる!これがジギングの戦略ゲームとしての面白いところでも有ります。

持てる限りの力を使ってジグをしゃくることはもしかしたらこれがジギングの原点のスタイルなのかもしれませんね。


吉田匡克

メタルジグの形状(スライド系ロングジグ編)

ジギングのテクニックが多様化した現在、そのテクニックに対応させるべく専用のメタルジグが数多く登場してきた。ショップの店頭で見かける数多くのジグの前で、「どのジグがいいのやら?」と思案しているジガーもきっと多いことだろう。
そこで基本的にだが、現在注目されているジグを一点紹介しよう。
   
スライド系ロングジグ

昨年あたりから大型のヒラマサ狙いに注目されているのが、このタイプである。ロングジグの中には、全長30cmを越すものもあり、当初は「こんなに大きなサイズで本当に釣れるの?」と思われた方もいることだろう。(ほとんどの人が思ったかな?)
しかしながらその実力は大型のヒラマサだけでなく、ジグの全長と変わらないような魚までがバイトしてくるアピール力が抜群のジグなのだ。
スピニングタックルを用いての横の釣りで多用されるロングジグだが、(基本操作はテクニカルノートで浅井陶太氏が書かれていることを参考にしてください。)見た目の特徴として長いのは勿論のこと、先端から細く、ボディーの厚みも薄く、いかにも引き重りが軽そうな外観であることが多い。
実際、多くのロングジグは水切れ(抜け)が非常によく、ジャーク後、ジグは惰性で水中を突き進もうとする。
その後、水平姿勢のまま緩やかにフォールしたり、進行方向と逆にスライドしたり、左右にスライドしたりとフォール姿勢はイレギュラーである。ジグの形状やトータルウエイト、ウエイト配分によっても違ってくるが、相対的には重量の重いジグほど、その傾向は強くなる。
アングラーはジャークからフォールへと移行する時間でそのことを体感できる。従来形状のテールヘビージグでは、ジャーク後すぐに下方向へのフォールへと姿勢を変え、次のジャークの時にはジグの重みをしっかり感じるだろう。一方、ロングジグはジャーク後、横方向への水平やスライドフォールとなり、下方向へのフォールまでの時間がかかるのだ。つまりジグの重みを感じるのに従来形状のジグよりも数秒タイムラグが発生するのである。時間が掛るほどジャークの伸びとスライドが長い(距離や時間)といえるだろう。このことが実質的なロングジグの大きな特徴である。  
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話はそれるが、ブラックバスフィッシングでも同じような現象(釣り方)が起こっている。
フロリダバスが生息する池原ダムでは、ロクマルアップ(60cm以上のブラックバス)狙いには20cm前後のスイムベイトやトラウトベイトが有効とされている。中には16インチ(約40センチ)のワームまである。ルアーの引き波によるアピールもさることながら、ロングシルエットのルアーが魚に対し強烈なアピールをすることが、このことからもお分かりいただけるだろう。いろんな形状のロングジグがあるので、引き心地やアクションの違いなど、自ら試して使い比べるとおもしろいだろう。

今後、まだまだ過激な長さ、重さのジグが登場しそうで楽しみだ.


南 知之

理想のジギングフックとは? 

1)フックの形状に対する僕の基本理念 

ジギング用のフックを考える時、認識しなければならない事がある。
ジグに取り付けるフックとエサ釣りに使われるフックとの形状の違いだ。
魚が捕食行動を取る時、その対象となるフックには注意すべき大きな違いが存在する。
エサ釣りに使用されるフックはエサの中に埋め込まれた物であり、魚はフックとエサを同一視し捕食に至る。
ところがジグに取り付けられたフックの場合、魚にしてみれば捕食対象はあくまでジグの方であり、ジグを丸呑みしないかぎり、ジグとフックには距離が発生している。フックアップしたターゲットはフックに喰いついたのではなく、あくまでもジグにバイトし、その瞬間に近くにあったフックが吸い込まれフッキングに至るのだ。現在、ジギングで主流となっているアシストフックは、少しでも魚の捕食するジグの位置へフックを装着しフッキングの確率を上げるために考え出されたシステムだ。    
話は少しそれるが、シャウト!にはサバ皮やオーロラスレッズでアピール性を高めた、ジャコフックという商品がある。これについて「シャウト!のジャコフックはジグではなくフックに喰い付いてきているのか?」とよく聞かれる。僕自身、正直いって魚に聞いたことがないので解からない。しかし、捕食対象がジャコフックとジグのどちらであったにせよ、細軸のフックに軽いマテリアルで飾り付けされたジャコフックはバイトの瞬間に太軸のフックに何も付けていないアシストよりも口の中に吸い込まれやすい事は事実だ。ジギングに適したアシストフックとして吸い込まれやすさ、すなわち「軽さ」は重要な要素の一つなのだ。
では、もう一つの要素である「形状」はどうだろうか。ジギング用としてフッキングしやすいフックの形状を考える時、アユ釣りのフックからは勉強させられる事が多い。ターゲットが捕食(アユの場合は体当たり)しようとしている対象とフックに距離がある所がジギングに似ているからだ。
口の中に納まったフックを引っ張り出してフッキングする釣りとは違い、アユの鈎は一瞬の体当たりでフッキングに持ち込む性能がある。ジグを追ってきた対象を友釣りのように引っ掛けたいわけではないが、アユのフックはどのフックをとっても単に鈎先が鋭いだけではなく、その形状には考え抜かれた拘りがあり、多種多様な形状の微妙な違いはフィールドで大きな違いとなって現われる。

形状では微妙に違うアユのフックだが、全てに共通する点が一つある。フックの先に触れた瞬間ラインが引っ張る方向にフックポイントが向けられている事だ。(図1)
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この鈎先の向きであれば引っ張られる方向にまっすぐ突かれるので小さい力でもフッキングが可能だ。
一般的にフックはAの方向に引っ張られ刺さると思われがちだがそうではない。フッキングのパワーがフックポイントに伝わるフックの姿勢、つまりBの方向に引っ張られた時にフックは刺さりだす。(図2)

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どのようなフックでもフックポイントに負荷が掛かる前の静止状態と刺さり出す瞬間のフックの姿勢は違う。この姿勢の差を
鈎の「逃げ」と呼んでいる。(図3)

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このフックの逃げを見るにはハリスをセットした状態で自然にフックをぶら下げてフックポイントに指をあててみる。そしてハリスを引っ張ってみるとフックの姿勢が変化していくのが見てとれる。逃げ角度の大きいフックほどフックポイントが魚の口に触れてから立つ(刺さりだす)まで時間と違和感を魚に与えるフックと言える。
   
極端な例を上げれば、ハエ縄鈎のような逃げがほとんどないフックはフックポイントに触れた瞬間からフック逃げることなく刺さりだす。フックポイントの向きと引っ張る方向が同じなので力の分散がまったく無い。ジギングで使用した場合の欠点はこの形状のせいでフックポイントが刺さるべき所に触れるチャンスは少ない。軸はかなり太く重いが基本的にエサごと丸呑みさせて引っ張り出し、口の周りに掛けるフックなので、ジギングに使った場合は完全に口の中にフックが入り、吐き出す前にフッキングしないと掛からない。形状によるフッキングパワーの伝達性能と軸の太さによる強度は最高のフックだ。

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一方、(図4)のような逃げの多い鈎はハリスを引っ張ってフックポイントが立った時に鈎先の最も抵抗なく刺さる方向と引っ張る方向の角度が大きい。前述のハエ縄鈎に比べフッキングに力が必要だ。ジギングに使った場合はフックポイントが魚体に触れるチャンスが多いのでヒットする確立は高い。
ただし、しっかりとフッキングしないとフトコロまで刺さりきらずバレが多い。口の奥深くでも刺さり始めるので、歯のある魚ではハリスが切れる原因になる。硬いところだと貫通しなかったり、口内の身を切って滑ってしまう事や、逆に浅いスレ掛かりが多い。    


2)釣り鈎の素材

鈎の素材はその多くが鍛鋼だ。鍛鋼とは鍛造可能で焼入れのできる鋼の事で、そのうち屈伸や折損の少ない中炭素鋼が釣り鈎には使われている。
中炭素鋼は炭素含有量が0.6~1.0%のものを意味する。鋼の硬度は炭素含有量によって増加するが、硬度と共に弾力も必要な釣り鈎にはその炭素含有量にも限界がある。日本刀に使われている鋼は「玉ハガネ」と呼ばれ炭素含有量は8.9%にもなるが、釣り鈎に使われている鋼はそれほど高い含有量の物ではない。一般的にカーボン100と呼ばれている鈎は1.0%の鋼の事でカーボン60なら0.6%の鋼を意味する。焼入れをする前の硬度は1.0%の方が強いのでカーボン100の方が良い鈎だと思われがちだがそうではない。焼き入れをする事でその強度は数倍にもなるが、やり方次第ではカーボン60の鈎が100を上回る。焼入れの温度と冷却速度、冷却に使う焼き入れ液の種類と温度、線材の太さ、大きさなどの要素とその後の焼き戻しが絡み合い釣り鈎は製造される。現在、技術の発達によってバナジウム、リン、マンガン含有の鋼などいろいろな素材があるが、結局は前述の焼き入れ次第で鈎の性質は大きく変わるのである。



3)理想の鈎、その一例。

シャウト!のクダコフックはこれまでに述べた僕の鈎の知識とテスト結果から生まれたフックだ。
ここまでに述べた「釣り鈎」の特性を理解してもらえれば僕がこのフックをどう考えてデザインしたか解かって貰えると思う。最大の特徴はアップアイと呼ばれる外側に曲げられたリング。これはフライフックによく施されている形状で、アシストフックに加工したときのための配慮だ。従来のストレートアイのフックを使ってアシストフックを作った時、太くて張りのあるラインほどリングから出たアシストラインがフトコロ側に張るので静止状態からフックポイントが立つまでの逃げが大きくなる。
クダコのアップアイはラインをストレートに出せるので逃げ幅が少ない。エサ釣りのフックの常識からすればとんでもないフックだがハリスの種類や硬さが全く違うのだから形状も違って当然と考えている。もう一つ拘った点が鈎先のテーパーだ。太い鈎ほど刺さる時の抵抗が大きい。鈎の製造工程の中で「尖頭」(せんとう)という作業がある。線材を削って鈎先を作る作業で、一般的な釣り鈎は「三本先」と呼ばれる尖頭を施す。「三本先」とは線材の3倍の長さを削る事を意味する。すなわち線材の直径が3mmなら9mmの尖頭をする訳だが、クダコフックはそれよりも長い「五本先」の尖頭をしている。
こうする事で鈎先のテーパーは通常の三本先よりも鋭角になり、よりスムーズに刺さるフックになる。
ただし、欠点として鈎先が鋭角になるという事は細くなるという事であり横向きの力に対しては三本先の方が勝る。つまり、フッキングが弱く刺さりきらずに魚の負荷をフックポイントで受けて横向きの力が加わった場合は三本先よりも弱いという事だ。しかし、あくまでもフックポイントの仕事は刺す事であり、魚とのやり取りをするのは、フトコロだ。前述のような場面はしっかりとしたフッキングにより回避できると考え、クダコフックではスムーズに刺さる5本先を採用した。クダコフックはそのような特徴のあるフックで短所もあれば長所もある。メーカーに勤める者として、自分自身がデザインしたフックの短所は言いたくないのが本音だ。しかし、短所は長所であり逆もまた真と言える。クダコフックの短所としてはカン付きのため重い事が挙げられる。カン付であるがゆえに、強度がありリアフックでの使用を可能にしている反面、重く太軸のためフッキングに力がいるのだ。特にフッキングパワーの小さい女性や初心者では刺さりきっていない事があるようだ。僕のよく行くジギング船の船長からもそんな相談を受け、近海用に新しい鈎を来年発売する事となった。このフックではフッキング性能の向上と軽量化を優先した。
プロトタイプを見て貰えばわかる通りフックポイントの方向からフッキングパワーの伝達に優れた形状だ。
その分、先に述べたはえ縄鈎ほどではないが鈎先が魚体に触れるチャンスは少ない。スレで掛かる事はまず無いが、口の中にフックが入れば必ず刺さりきる。ダブルバーブ(二つのカエシ)は通常のシングルバーブに比べそれぞれを小さくして刺さる時の抵抗を軽減し、なおかつカエシによる保持力を高めた。カン付きにせず撞木にしたのは軽量化のため。はっきり言って一般的にこれまでのジギング用フックと比較すると、この形状は抵抗のあるフックだと思う。しかしこの記事を読み、使って頂ければその意味を理解して頂けるフックと信じている。

様々な鈎を論じてみたが、どのタイプのフックも形状的に一長一短があり、ジギングでもいろんなターゲット、深さ、ボトムの状態、魚の生態とその活性がある。どんな状況でもこのフックだと言い切れるフックは残念ながらない。しかし、様々な状況の中から最適のフックを選び出す知識を持つ事こそ重要なのでは無いだろうか。
それが釣りの楽しみ方だと考えるのは僕だけではないと思う。


小野誠

私はあらゆるルアーフィッシングの中で、釣方としてはジギングが一番面白いと
思っている。この面白さを伝えるべく誰かに勧めると、「しんどいやろ?あの釣りは?」てな答えが帰ってくることがままある。
悲しいかな私の同年代には(言いたかないけど40代)未だそういう考え方の人も多いようだ。
そこでスロージャークで魚を釣るためにはどうすればいいか考えてみよう。
何も楽をしたいからばかりではなく、真剣に考えてみるとこのメソッドには様々な可能性があることが解るはずだから…。
頁の関係上、長々と語るわけにもいかないので、結論から言ってしまうと「スロージャークでも対象魚全てが釣れる」のである。私自身おおよそ全てのジギング対象魚をスロージャークで釣った経験がある。その中には高速回遊魚で名高い魚も多い。それどころか時速100km以上と言われるマグロ類などは、スロージャークによるヒット率の方が高いくらいだ。また、パヤオや流れ物に付いたシイラやカツオ、サワラ、前述のマグロ。ややプレッシャーの高い青物全般に、抜群の威力を発揮する。それは何故なのだろう?    
全てのルアーフィッシングには二種類のアクションがあると言っていいだろう。
「アピールするためのアクション」と「食わせるためのアクション」である(それらが一つにまとまる場合もあるが)。ジギングも例外ではない。スローアクションといっても、ただのんびりリールを巻いているだけでは成功しない。この二つのアクションを常にコントロールする必要がある。一番重要なのはいつの場合もアングラーの意識の問題だ。
順を追って具体的に話そう。まず、このアクションの最大のメリットの一つは「楽に釣れる」ことだから、
姿勢をまず自然体に保とう。背をのばし、足を自然に広げ、腕の角度も無理をしないようにする。そして自分が最も楽なリズムでしゃくれるスピードをまず把握する。これを覚えたら第一段階は完成。しかし問題はその後だ。
この場合、一定のスピードでゆったりとリトリーブするわけだから、魚にプレッシャーを与えてしまう事も考えられる。つまりスローであるが故、魚にジグが餌ではないと見破られてしまう可能性があるという
ことだ。まずこの事を頭に入れておく。しかし逆もまた真なりで、ゆっくり動くからこそアピール度は高いとも言える。広範囲に「そこにジグがある」ことを知らしめる事が出来るのだ。これを利用して魚に興味を持たせる。
そして一工夫を加えよう。食わせるためのアクションを実践する。適当な間隔で巻き上げたジグを、すうっと沈めるような気持ちでティップを送り込んで(事務局注:同テクニカルノート「私流ロングジグについて」参照)やる。沈める幅は各々アングラーの感覚によるところが大きいが、この沈め幅と巻き上げ速度の微妙な変化により、スローアクションでも無数の
バリエーションが可能となる。この動きを意識できるようになれば、既に第二段階に進化したのも同然だ。
ジギングのターゲットとなる多くの魚は、巻き上げるジグよりも、沈むジグに対して鋭い反応を示す。
これは弱ったベイトに見えるからとか、落ちるジグの方が自然な動きをするからとか諸説があるが、実際そういうシーンに出会うことは多い。前述のマグロ類などは顕著に沈むジグに反応が良い。
ゆっくりとした巻き上げ動作の中に、頻繁に沈み幅を持たせたアクションが、半信半疑でジグを追ってきたターゲットに「食う決断」を促すことになるのだろう。仲間内ではティップを送り込んで沈め幅を持たせることを「ステイ&ジャーク」と呼んでいる。早い話食うきっかけをワンキャストでたくさん持たせるためのテクニックだが、この際「ステイ」というように、ただの「ストップ」ではなくてヒットを「待つ」くらいの意識を持って沈め幅を作ってやる。スローで引くからこそバイトのきっかけは多くなり、これが時として抜群に効く。これで第三段階の免許皆伝だ(早いな…)
勿論、このアクションが全てのシーンに有効ではあり得ない。一つのアクションで全ての状況をカバーできるほどジギングは甘くない。あくまでもバリエーションの一つとして考えて欲しい。あくまで一端だ。

ただ、ジギングとしては非常に楽なメソッドで、魚種や状況によっては非常に良く釣れるアクションなので覚えておいて損は無い。自然体で釣れるから女性や年配の方でも出来るし、タックルも人間も
故障が少ない。
さらに腰を伸ばした(楽な姿勢をとって)状態での、長時間無理のない有酸素運動なので、ハードな運動をした場合より、ダイエット効果も期待できるそうな(ほんまかいな?)。いやいや、これは某有名エステシャンの言葉だから少しは信憑性があるかも…。ただし両腕をバランスよく使うのが条件らしい。
もう一つ面白い説を紹介すると、ターゲット自体が高速回遊魚でも、ベイトとなる魚の速度がそれほど速くない、という説がある。「速くない」わけでは無いだろうが、イワシやイカナゴ等のベイトとなる
小魚の多くは、瞬間に長い距離を逃げないものだ。これは群れが大きいほどそうだ。実際の映像を見ても、自らの群れの外にまでは決して逃げようとしない。むしろ近くにいる仲間の中に隠れようとする。
この事実からあまり長い距離を高速で動かさないでも、ターゲットは捕食の意思を損なわないというのだ。
これは種子島でキハダやカンパチの飲ませ釣りをしている漁師さんの話だ。彼はアジとジグを使い分け(手釣りのスローアクションで)NO.1の水揚げを誇っている。これが本当ならスロージャークにはもっと
深い可能性があるといえるだろう。

実際の釣果も期待できてその他のメリットも多い。
貴方のバリエーションの引き出しに一つ新しいメソッドとして加えておいて欲しい。ひょっとしたら困ったときの解決策になるかも…ですよ。

池ひろと

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